9.特別受益
●一定の生前贈与は、特別受益にあたります。
●特別受益を受けた人は、相続時の取り分が減ります。
●特別受益は、相続人に対するものだけが該当します。
特別受益・特別受益者
家族などへ財産を渡す方法は、「相続」や「遺贈」だけではありません。
生前に、「贈与」という形で子どもに援助することもよくあります。
例えば、このようなケースが該当します。
①長女のマイホーム購入資金を援助する
②長男の開業資金を援助する
このような相続人への生前の贈与は、遺産の前渡しとみなします。
その贈与分も相続財産にプラスして遺産分割を行います。
被相続人の死亡時の財産だけで単純に分割すると、贈与を受けた者と、そうでない者との間で取り分の不公平が生じるからです。
これを特別受益の持戻しといいます。
そして、特別な贈与を受けた相続人を特別受益者といいます。
特別受益の持戻しをした結果、相続分がゼロまたはマイナスになることがあります。
この場合、基本的にはもらい過ぎた分を返す必要はありません。
しかし、遺留分を侵害している場合には、その分を返還する可能性があります。
特別受益にあたる財産
特別受益にあたるものは、これらの3つです。
①結婚や養子縁組のための贈与
持参金、嫁入り道具、支度金などがあたります。
結納金や挙式費用は含まれません。
②生計の資本としての贈与
住宅の購入資金、不動産の贈与、海外留学などの高額な学費、事業の資金援助、事業
承継のための株式の贈与などがあたります。
③遺贈で取得した財産
遺産分割前の先取りといえますので、相続人への遺贈はすべて特別受益にあたりま
す。
通常の生活費やおこづかいなどは含まれません。
ただ、明確な基準がありませんので、何が特別受益に含まれるかは、用途や金額の他、各家庭の資産や生活の実態などを含めて総合的に判断します。
なお、特別受益は相続人に対するものだけが該当します。
第三者への贈与や遺贈は、特別受益にあたりません。
特別受益を考える上で注意したいのは、贈与時の価値ではなく、相続開始時の価値で計算するという点です。
不動産や株式など価格変動の大きい財産を持っている場合、大きく値上がりしていると、相続時の取り分が減ってしまうだけでなく、他の相続人の遺留分を侵害してしまう可能性があります。
また、贈与された不動産や株式を売却していても、現物があるものとして計算されます。
購入資金を出してもらった住宅をすでに売却してしまった場合も同じです。